マイクロソフトの共同創業者、ビル・ゲイツなど、ランニングを習慣にしている経営者は少なくありません。
ランニングでなくとも、何かしらの運動を習慣にしている人が多くいます。
忙しい彼らが時間のやりくりをして運動するのは、それだけ運動にはメリットがあるからです。
しかし、そういったことがわかっていても、運動を習慣化できない人もいるでしょう。
そこで今回は、運動の効能を脳の働きから説明すると共に、モアイくんのように分かっていてもなかなか運動できない理由についても説明し、その対策もお伝えします。
理屈で理解出来ればきっと“運動した方が得”なことに気づくはずです。
目次
【1】脳の進化と運動の関係
人の進化を24時間で説明すると、近年のデジタル革命が起きたのは23時59分59秒のこととされています。
それまで、23時40分頃までは狩猟採集生活でした。
つまり、人の脳は現代でも狩猟採集生活にマッチしているのです。
狩猟採集生活では、獲物を追いかけて走ったり、果実を求めて木に登ったり、体を動かす必要がありました。
そうしなければ、生き延びられなかったからです。
そういうことです。
ですから、人の脳は今でも身体を動かすこと、つまり運動することを“良いこと”だと感じるように設定されています。
その証拠に運動するとドーパミンという快楽を感じる神経伝達物質が出ます。
運動するとしんどいけれど、気分が良くなるのはそのためです。
この、脳が喜んで気持ち良くなる、という性質を使えば、運動を習慣にすることもできるはずです。
【2】運動ではなく、スマホを手放せない理由
『スマホ脳』の著者、アンデシュ・ハンセン氏は、スマホをいじり、SNSをチェックすることも脳にとって嬉しいことなのだと言っています。
ですから、モアイくんがついついランニングシューズではなく、スマホを手に取ってしまうのもある意味、仕方ないことなのです。
脳は果実がなっていないか確かめるために、高い木の枝に登る時のワクワクと、新しい通知がきていないか、SNSをチェックする時のワクワクを区別できないからです。
SNSを開発者は、そうした性質を上手く利用しているわけです。
ただしハンセン氏は、スマホをいじるより運動をする方がより多くドーパミンは出ると述べています。
結局、スマホを手放し、ランニングシューズを履いた方が得ということです。
【3】運動が好き、でもだらけるのも好き、矛盾する脳
脳は運動に喜びを感じますが、同時に、だらけるのも好きです。
ですから、モアイ君が走らずにダラダラしたいというのも自然なことなのです。
というのも、狩猟採集生活ではいつ食糧が手に入るか分からないので、無駄なエネルギーは使わないようにしていたからです。
必要な時以外、エネルギーを使わない、つまり、ダラダラしている、これが生き延びる上で大切なことで、脳も身体をそう仕向けるように設定されています。
甘い物や、揚げ物など、カロリーが高い物を美味しいと感じるのもそのためです。
確かに、食糧に困ることのない現代では、少し困った設定ではありますが、ダラけそうになったら、もう一つのやり方、つまり、身体を動かす方で脳を喜ばそうと気持ちを切り替えましょう。
同じだらけるにしても、運動して疲れた後の方が、心地良いはずです。
【4】運動による効能
運動によって集中力やストレス耐性、発想力が上がるとされています。
その理由についても脳の働きから説明していきましょう。
4-1運動によって集中力が上がる理由
集中するにはあらゆるノイズをシャットアウトしなくてはなりません。
そのために一役買ってくれるのが、ドーパミンです。
ドーパミンは何に集中すべきかを選択し、それ以外のノイズを意識から取り除いてくれます。
かつて、狩猟採集生活では集中しなければ獲物を狩ることはできなかったからです。
ですから、狩りなどで体を動かしている間、集中力を高めるドーパミンが出るように設定されているのです。
この仕組みを狩りではなく、仕事に使うことで集中力を上げられます。
仕事の前に運動(最低20分程度のジョギングなど)を習慣化するだけでも集中力が上がり、その効果は数時間続きます。
4-2運動によってストレス耐性が上がる理由
かつて、狩猟採集生活において、ストレスとは即ち危険のことでした。
そうです。
そうした危険にいち早く反応する脳の部位が扁桃体です。
扁桃体がコルチゾールというストレスホルモンを出すことにより、心拍数が上がり、身体は臨戦態勢に入ります。
仕事のプレゼン等で、緊張するとドキドキするのも同じ仕組みです。つまり、身体にストレスがかかっているわけです。
それは、逆説的なようですが、運動すること自体が、身体にとってストレスだからです。
運動すると、身体に負荷がかかり、コルチゾールが出ます。
つまり、ストレスを受けている状態になります。
運動を終えるとコルチゾールも減りますが、重要なのはこの時です。
近年の研究で、運動を終えた後、コルチゾールは元の量より減ることが分かっています。
そして、運動を繰り返すことで徐々にコルチゾールの量は減っていき、前はストレスに感じていたことも、次第にストレスに感じなくなっていきます。
つまり、運動を繰り返せば、あなたがプレゼンをスラスラ発表出来る日も遠くない、ということです。
一方、扁桃体のストレスへの警告に対し、(慌てなくても大丈夫だ)と、ブレーキをかける部位が、海馬と前頭葉です。
運動はこの2つの部位もパワーアップさせてくれます。
海馬は運動により新しい組織が作られますし、前頭葉にも流れ込む血流が多くなり、扁桃体と繋がりやすくなります。
これにより、扁桃体が反応しても、すぐにブレーキがかかり、平静を保てるようなります。。
4-3運動によってストレス発想力が上がる理由
歩くことで新しい発想やアイディアが浮かびやすくなります。
理由は脳全体、特に発想に関わる前頭葉や視床への血流が増えるためです。
ただし、あまり激しい運動は、筋肉へ血流が行ってしまい、効果が薄いです。
ですから発想力を上げるための運動は、駅から会社への道のりを早足で歩くくらいがちょうど良いでしょう。
まとめ
今回は脳の働きに関連付けて運動の効能を説明しましたが、それ以外にも運動の効能は沢山あります。例えば、身体が鍛えられ、免疫力も上がるのもその1つです。
いずれにせよ、働き盛りの社会人にとっては良いことばかりです。
ぜひ、“面倒だ”と駄々をこねる脳を説き伏せて、運動を習慣化してみてください。